全国商工新聞 第2966号3月14日付
「なんでこんなに高いの?」「とてもじゃないけど払えない!」―と各地で悲鳴が上がっている国民健康保険料(税)。全国の民主商工会(民商)では、高すぎる国保料(税)の引き下げや正規保険証の発行を自治体に求めています。またみんなで減免申請を行い、払える国保料(税)へと負担を軽減しています。国保制度の仕組みや活用できる制度などをQ&Aで紹介します。
国保料・税が払えないとき減額免除制度が活用できます。国が定める軽減制度(法定軽減)と各自治体が定める申請減免制度があります。
法定軽減は、世帯主(国保加入者でない場合を含む)と加入している家族の総所得が、国の定める基準額以下の世帯が対象。応益割(均等割、世帯割)が区分に応じて7割、5割、2割と減額されます(図1)。確定申告をしていれば申請の必要はありません。
所得金額の修正によって減額になった場合、国保税は5年間、国保料は2年間さかのぼって申請できます。
申請減免制度は各自治体が条例で定めています(国保法77条)。減免基準は自治体によって異なります。
民主商工会(民商)では集団で減免申請を行っていますので、払えないときは最寄りの民商に相談してください。滞納をそのまま放置していると保険証の取り上げや、滞納処分(預金等の差し押さえ)が執行されます。国保課の窓口に出向いて払う意思を示し、減免を相談しましょう。
納税緩和制度は国保料・税にも適用されます。
徴収猶予、換価の猶予、滞納処分の執行停止の三つが柱(図2)。徴収猶予が認められると1年以内の納付が猶予され、さらに1年延長できます。また、差し押さえを受けていたときは解除を申請でき、延滞金が減免されます。
「換価の猶予」は加入者の申請による申請型と市町村長の職権による制度があります。申請型「換価の猶予」は「納期限から6カ月以内の滞納」という制約がありますが、認められれば、差し押さえ処分の解除や延滞金などが減額・免除され、1年以内の分納(最長2年)が認められます。
単なる分納(納付誓約)では担当者が代わった途端に一括納付を迫られ、納付できなければ差し押さえ処分を受ける場合もあります。また、延滞金が減免されることはありません。
納税緩和制度に基づいて親身に納付相談に応じるように主張することが大切です。
厚労省は差し押さえ禁止の基準について「1カ月ごとに10万円と滞納者と生計を一にする配偶者その他の親族があるときは、1人につき4万5000円を加算した額は差し押えることができない」ことを示しています(図3、滞納処分の執行停止も同基準)。倉林明子参院議員(共産)の質問に対して加藤勝信厚労相(当時)は「生活を困窮させる恐れがあるときは差し押さえの対象外とすることが大事」と答弁しています(2017年6月8日)。
また、国税徴収法(75~78条)には生活に欠かせない衣服や寝具、家具、生活に必要な3カ月間の食料、給料・年金・手当などの一定額は「差押禁止財産」として定められています。
児童手当や年金、給与などが振り込まれる口座の差し押さえが各地で横行していますが、預金口座に振り込まれた児童手当への、鳥取県による差し押さえは違法との判決が確定しています(広島高裁松江支部13年11月27日)。
生活を困窮させる差し押さえや差押禁止財産の差し押さえは「違法である」と抗議し、解除を求めるとともに、分納ではなく徴収猶予や換価の猶予を認めるように市町村と交渉することが大切です。
保険証取り上げは、医療を受ける権利(受療権)を奪い、生存権を脅かしています。経済的理由による「手遅れ死亡事例」のうち47・7%が「無保険・資格証明書・短期保険証」という実態が明らかになっています(2017年全日本民主医療機関連合会調査)。
政府は国保料・税が払えず保険証が取り上げられた世帯について「医療の必要が生じ、世帯主が市町村の窓口で医療機関への医療費の一時払いが困難と申し出た場合、短期保険証を交付する」ことを閣議決定しています(09年1月20日)。
受診時にいったん医療費の全額を負担しなくてはならない資格証明書についても、高校生以下の子どもは6カ月間有効の短期保険証を交付するように国保法を改正しました(10年7月から)。
厚労省の調査(18年度)では全加入世帯1836万6762のうち、滞納世帯は267万1058に上っています。
国保料・税の滞納を理由にした短期保険証の交付は75万4043世帯、資格証明書交付は17万1501世帯で、合わせて約92万5544世帯(滞納世帯の34・7%)が正規の保険証を取り上げられています。
国保課で、払えない理由や受診が必要になったことなどを話して保険証の交付を求めましょう。
国保加入者が特別な理由で、受診時の窓口負担(一部負担金)が払えない場合は減額・免除制度が活用できます(国保法44条)。対象は主に、①災害による世帯主の死亡や資産の損害②干ばつによる農作物の不作、不漁による収入減③事業の休廃止、失業や所得の減少―などとなっています。
収入がもともと少ない人への適用には、厚労省は①入院患者がいる②世帯の収入が生活保護基準以下③預貯金が生活保護基準の3カ月以下―と、厳しい基準を設けています。
減免規定がないことを理由に申請を受け付けない自治体でも、厚生労働省は条例や規則等の定めがなくても国保法に基づいて実施できることを明確にし、国の基準に該当すれば、国が減免額の2分の1を支援していますので、権利を主張して積極的に適用を求めましょう。また、国基準よりも広い範囲を設けている自治体もあるので確認しましょう。
各地で起きている豪雨災害でも災害救助法の適用を受けている市町村では基準に該当する場合、申告することで一部負担金が免除されます。東日本大震災の被災地では、宮城県が被災者への一部負担金免除を打ち切りましたが、岩手県や福島県では制度を継続しています。
国保制度は国民の4人に1人が加入し、国民皆保険制度の重要な柱を担っています。現在、加入者のうち無職者と非正規雇用者が8割近くを占め、平均所得は230万円(95年)から85万円に減っています。低所得者が多いにもかかわらず、保険料は中小企業の労働者が加入する協会けんぽよりも高くなっています。
こうした構造的な問題を解決するため、国庫負担金を増やすことが急務です。
全国知事会が公費1兆円の投入を求めているほか、全国市長会、全国町村会も協会けんぽ並みの保険料に引き下げるため、公費増額を国に求めています。1兆円投入で「均等割」と「平等割」をなくせば、全国平均で16万円が軽減され、協会けんぽ並みになります(図4)。自治体では子育て世帯の負担軽減のため、子どもの均等割を減免する動きが広がっています。
併せて国庫負担金を医療費の45%(84年)まで戻し、国保料・税の負担を軽減させるために一般会計から法定外繰り入れの解消を自治体に迫る国の姿勢を改めることが必要です。国は法定外繰り入れに対し、国の財政支援を減額すること(マイナス評価導入)も検討しており、中止を求める運動も必要です。
また、各地の民商では地域の人たちと連携して自治体と交渉し、国保料・税の引き下げを実現させています。